量子力学3次元効果シミュレーション・モジュール

Quantum 3D™は、半導体デバイスにおけるキャリアの量子閉じ込めおよび量子輸送など、さまざまな効果をシミュレートするモデルを提供します。セルフコンシステントなシュレディンガー—ポアソン方程式のソルバにより、静電ポテンシャルとセルフコンシステントに基底状態エネルギーのキャリアの波動関数が計算できます。シュレディンガー方程式によるソルバは、非平衡グリーン関数(Non-Equilibrium Green’s Function: NEGF)アプローチと連立させることができるため、強い横の閉じ込め状態にある3次元デバイスのバリスティック量子輸送のモデリングが可能です。ナノスケール・デバイスのサブバンド輸送をモデリングするための別のアプローチとして、横方向のシュレディンガー方程式と1次元ドリフト拡散方程式を連立させたドリフト拡散モード・スペース・モデルがあります。量子モーメント輸送モデルにより、キャリア輸送における閉じ込め効果をシミュレートできます。そして、この方法は従来のドリフト拡散アプローチと同様に、容易に実行可能です。この量子閉じ込め効果は、エネルギー・バランス/流体輸送モデルにも含まれています。また、Quantum 3Dは、酸化トンネル効果もモデリングします。

シュレディンガー —ポアソン方程式

量子閉じ込め効果をモデリングするために、Quantum 3Dでは、1次元または2次元シュレディンガー方程式および3次元ポアソン方程式を使用したセルフコンシステントなソリューションを提供します。シュレディンガー方程式で得られた固有エネルギーおよび波動関数は、量子化された電子濃度を求める際に使用され、次にポアソン方程式に引き継がれます。予測子・修正子法を使用することで、高速収束が実現します。リアル・スペースの2次元シュレディンガー・ソルバに加えて、高速プロダクト・スペース・ソルバが利用可能です。これにより、2方向における1次元ソリューションで得たプロダクトの線形組み合わせとして2次元波動関数を求めます。この方法は一桁高速であるため、Atlasでシンプルな矩形形状を持つ規模の大きいデバイスのシミュレートに使用されます。

3次元構造の表面に対する電子の波動関数の等高線図です。3次元ポアソン方程式を使用してセルフコンシステントに解かれたシュレディンガー方程式(1次元:左図および2次元:右図)によって得たものです。

非平衡グリーン関数アプローチによるバリスティック量子輸送

シリコン・ナノワイヤー・デバイスは、最近のナノ・デバイスMOSFETに適した構造です。ナノワイヤーの円柱形状は、ゲートが取り囲んでいる構造になるため、完全な静電コントロールが可能となります。それにより、デバイス寸法をさらにナノメートルまで小さくできます。ナノワイヤー・トランジスタ、および強い横の閉じ込め状態にある他の構造における電子輸送をモデリングするために、Quantum 3Dは、非平衡グリーン関数(NEGF)アプローチをベースにした新しい量子力学モデルを備えています。これは完全な量子力学アプローチで、ソース– ドレイン・トンネル効果、バリスティック輸送効果、および量子閉じ込め効果のような効果を同じように扱います。この新しいNEGFソルバによって、ゲートに取り囲まれているMOSFETのような3次元デバイスのバリスティック量子輸送がモデリングできます。モデリングはまず最初にデバイスの横断片に対して2次元シュレディンガー方程式のソリューションを実行し、固有関数と固有エネルギーを求めます。それから、ソース領域からドレイン領域へ伝播していく、さまざまなサブバンド(モード)における電子濃度および電流を、NEGF量子輸送方程式で計算します。一般的に、電子モードの混合の分析には、結合モード・スペース(Coupled Mode Space: CMS)方式が使用されます。均一の断面のようなよりシンプルな場合は、より早く処理ができる分離モード・スペース(Uncoupled Mode Space: UMS)方式を使用することも可能です。


結合モード・スペースNEGFアプローチで計算された、ソース/ドレイン領域が張り出している3次元シリコン・ナノワイヤーFETに対するデバイス構造(左図)、トータル電流密度の等価面(右図)、および電子濃度の等価面(中央)の図です。
同一のチャネルの断面を有するSiナノワイヤー・トランジスタの構造図(左図)およびI-V特性(右図) です。分離モード・スペースNEGF アプローチで計算しました。

ドリフト拡散モード・スペース・モデル

ドリフト拡散モード・スペース(Drift Diffusion Mode-Space:DDMS)モデルは、強い横の閉じ込め状態にあるデバイスにおけるキャリア輸送の準古典的なアプローチです。このモデルは、NEGFモード・スペースよりもシンプルなアプローチです。NEGF モード・スペース・アプローチ同様に、横方向の2次元シュレディンガー方程式と各サブバンドの1次元輸送方程式に分離されます。ただし、このモデルでは、量子輸送方程式の代わりに、古典ドリフト拡散方程式を解きます。したがって、このモデルは、横方向における量子効果を得ることができますが、移動度、再結合、インパクト・イオン化、バンド間トンネル効果のAtlasモデルをすべて継承しています。このモデルにより、固有エネルギー、キャリア密度、電流、擬フェルミ準位、生成再結合率など、1次元サブバンドの分解された量を出力できます。

DDMSモデルにより計算された、FinFET(Lg:30nm、幅:6nm、厚:7nm)における電子濃度の等値面(左図)および電子電流密度(右図)です。 横方向の平面における量子効果が厳密に考慮されています。高速プロダクト・スペース・ソルバを用いて2次元シュレディンガー方程式を解きました。
上図は、ドレインとゲートに0.5V印加時のFinFETにおける複数の電子サブバンドの固有エネルギー(黒線)、最下位の電子サブバンドの擬フェルミ準位(青線)、最上位のホール・サブバンドの擬フェルミ準位(赤線)を示しています。
DDMSモデルで計算された、FinFETのId-Vd特性です。濃度およびフィールド依存の移動度モデルが推定されます。

ボーム量子ポテンシャル

ボーム量子ポテンシャル(BQP)モデルは、位置に依存する量子ポテンシャルを用いて古典ドリフト拡散または流体力学の計算式を変更することで、量子効果を考慮します。このモデルは、量子力学のボーム解釈をベースにしていますが、2つの合わせ込みパラメータを含みます。このフレキシビリティにより、このモデルを使用してシュレディンガー—ポアソン方程式でキャリブレートでき、3次元すべてにおけるキャリアの量子の性質を概算できます。したがって、量子閉じ込め効果には、必然的にデバイスのI-V特性を含めることができます。

上図は、ボーム量子ポテンシャルを用いてシミュレーションした典型的なFinFETデバイス構造です。
一定の電子のボーム量子ポテンシャルの表面の図です (-0.10V時)。これから、電子濃度が著しく減少していることがわかります。そして、濃度はチャネルの周辺に集中しています。この結果に対応する断面も表示できます。
FinFETのチャネル中央の電子濃度です。EBQP効果ではチャネルの境界のへりで電子濃度が低くなっています。 つまり、その部分ではEBQPはネガティブで、中央では電子濃度が増え、その部分ではEBQPはポジティブと言えます。
FinFETのゲートに0.9V印加時のドレイン特性です。 量子閉じ込め効果を考慮せずに得た電流値と比べて、BQPモデルを使用した効果では、ドレイン電流が減少しています。

Rev.110613_04